車両管理台帳をはじめて作る人へ — 誰が責任を負い、どの欄が要るのか
社用車の台帳を作ることになった総務・事務の方へ。台帳そのものを義務づける条文はなく、決まった様式もありません。ではなぜ作るのか、誰が責任を負うのか、1台の行に何を持たせるのか。車検証から写せる欄と、リース車で気をつける点を順に。
社用車の台帳を作ることになった総務・事務の方へ。台帳そのものを義務づける条文はなく、決まった様式もありません。ではなぜ作るのか、誰が責任を負うのか、1台の行に何を持たせるのか。車検証から写せる欄と、リース車で気をつける点を順に。
「社用車の台帳を作っておいて」と言われて様式を探すと、見つかりません。
それで合っています。「車両管理台帳」という帳票を義務づけている条文は、道路運送車両法にも道路交通法施行規則にもありません。決まった様式もありません。
では、なぜ作るのか。法律が義務づけているのは帳票ではなく、期限を守ることと、車に原本を積んでおくことだからです。その期限と原本の所在を1か所で見えるようにするのが、台帳の役割になります。
作るのはあなたでも、責任を負っているのはあなたではありません。 ここを取り違えると、台帳の作り方も変わってしまいます。
| 誰が | 何を負うか |
|---|---|
| 会社(法律では「使用者」) | 点検を実施し、記録簿を車に備え置く。車検と自賠責を切らさない。義務者は会社です |
| 車の所有者 | 名義や住所が変わったときの変更登録。リース車ではリース会社になります |
| 安全運転管理者 | 毎日の確認と記録。台帳とは別の仕事です |
| あなた(総務・事務) | 期限を見えるようにし、原本の置き場を決める |
調べていると、似た名前の制度が出てきます。先に切り分けておきます。
整備管理者は、多くの会社では必要ありません。 選任が必要になるのは、乗車定員30人以上のバスを1台でも使う場合、乗車定員11人以上29人以下の車(マイクロバスなど)を2台以上使う場合、車両総重量8トン以上の車を5台以上使う場合です。 乗車定員10人以下で8トン未満、つまり白ナンバーの乗用車やバンだけなら、何台あっても選任は求められません。
運行管理者は、そもそも別の制度です。 緑ナンバーで運賃をもらって運ぶ会社の話なので、社用車を使うだけの会社には出てきません。
台帳を作らなかったことに罰金はありません。罰金が科されるのは、車が公道に出られる状態を欠いたときです。
| 何をしたとき | 罰則 |
|---|---|
| 自賠責が切れた車を走らせた | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 車検が切れた車を走らせた | 6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 車検証を積まずに走らせた | 50万円以下の罰金 |
| 名義や住所が変わったのに15日以内に届け出なかった | 50万円以下の罰金 |
いちばん重いのは、自賠責と車検の満期切れです。 そしてこの2つは、台帳の満期の欄が管理する対象です。台帳を作る理由は、ここにあります。
一方、定期点検をしなかったこと自体や、点検整備記録簿に書かなかったこと自体を罰する条文はありません。
必要な欄は11個です。その半分以上が車検証から写せます。
| 欄 | 中身 | 写す元 |
|---|---|---|
| 自動車登録番号 | ナンバー | 車検証 |
| 車台番号 | 名義やナンバーが変わっても残る番号 | 車検証 |
| 所有者 | 名義。リースならリース会社 | 車検証 |
| 使用者 | 実際に使っている自社 | 車検証 |
| 使用の本拠の位置 | その車を使う拠点として車検証に記録されている場所 | 車検証 |
| 車検の満期 | 有効期間の満了日 | 車検証(電子車検証はICタグ) |
| 自賠責の満了日 | 保険期間の末日 | 自賠責保険証明書 |
| 任意保険の満期 | 加入している任意保険の保険期間の末日 | 保険証券 |
| 点検の区分 | 3か月・6か月・1年のどれか | 車の用途と種別 |
| 最終点検日 | 直近の定期点検を実施した日 | 点検整備記録簿 |
| 記録簿の所在 | どの車に積んであるか | 現物 |
点検整備記録簿そのものは、台帳に写しません。 車に備え置くものなので、台帳が持つのは「どこにあるか」と「最後にいつ点検したか」までです。
この区別が必要になるのは、リース車です。所有者がリース会社、使用者が自社、という状態になるためです。
法律が名指ししている相手が分かれています。点検と記録簿は「使用者」=自社、変更登録は「所有者」=リース会社。この2つを1つの欄にまとめてしまうと、住所や事業所が変わったときに、誰が15日以内に動くのかが台帳から読めなくなります。
区分の列を1つ持っておくと、次の3つが決まります。
| 車の区分 | 定期点検 | 記録簿の保管 | 日常点検 |
|---|---|---|---|
| 事業用、車両総重量8トン以上の自家用など | 3か月ごと | 1年間 | 一日一回、運行前 |
| 自家用の普通・小型の貨物車、レンタカーなど | 6か月ごと | 1年間 | 一日一回、運行前 |
| それ以外(社用の乗用車など) | 1年ごと | 2年間 | 走行距離や状態から判断した適切な時期 |
白ナンバーでも、配送用のバンやトラックは真ん中の行に入ります。 乗用車ばかりの会社に配送用のバンが1台混じると、その車だけ点検の周期も日常点検の頻度も変わります。区分の列を持っておくのは、そのためです。
なお記録簿の保管は、乗用車のほうが長く2年間です。「1年」と覚えていると足りません。

電子車検証(ICタグ付き)では、券面に有効期間が印字されません。 二次元コードからも読めず、ICタグを読み取る必要があります。
つまり、車検証を目で見て満期を確かめる、ということができなくなりました。 事務所側の台帳に満期の欄を持っておく理由が、ここではじめて生まれています。読み取りには国土交通省の車検証閲覧アプリがあります。
Excelやスプレッドシートで1行1台 いちばん多い形です。並べ替えと検索ができるので、満期の近い車を月初に拾えます。作り方は Excelで車両管理をはじめる に書きました。
紙のファイルに車検証のコピーを綴じる 台数が少ない会社で見かけます。探すのに時間がかかるので、満期だけは別に一覧にしておくと楽になります。
車両管理のサービスを使う 台数が増えたときや、拠点が複数あるときに使われます。
どれでも差し支えありません。 決まった様式がない以上、探しやすいかどうかだけが判断の材料になります。
満期の欄は、写した日を一緒に残す 車検が通れば満期は変わります。いつ時点の数字なのかが分からないと、古い日付を信じることになります。
車を入れ替えたら、点検の区分も見直す 台数が同じでも、乗用車がバンに変われば区分が変わります。
リース車の記録簿の所在を空欄にしない リース会社が保管していることがあります。どこにあるかを書いておかないと、点検の実施を確かめるときに止まります。
差し支えありません。ただし原本は車に備え置くものなので、台帳の「記録簿の所在」には、原本がどこにあるかを書いておいてください。写しから日付を取っている場合は、そのことも添えておくと、あとで確認するときに迷いません。
台帳は自社で決める帳票なので、入れても構いません。ただし点検や自賠責の義務を誰が負うかは車の使用者によって変わります。 会社の車と同じ欄で管理すると、責任の所在が混ざります。列を分けるか、別の表にしてください。
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根拠: 道路運送車両法(e-Gov)(点検・記録簿・罰則)/自動車損害賠償保障法(e-Gov)(自賠責)/保険法(e-Gov)(保険期間を記した書面の交付=第6条)/道路運送車両法施行規則(e-Gov)(整備管理者の選任)/点検整備の種類(国土交通省)(点検の区分と保管年限)
欄がそろっていても、書いた日から少しずつ実物と離れていきます。車検が通り、車が入れ替わり、事業所が移る。新しくなるのは車の中の原本のほうで、書き換わらなければならないのは事務所の一行です。
この2つは、誰かが往復しないとつながりません。車検証を見た人と台帳を直す人が同じとはかぎらず、往復が一度抜けても、次に誰かが車まで見に行くまで気づけません。
その往復を短くするために、Poitto for Biz(開発中)を作っています。運転者はスマートフォンアプリで報告し、管理者はWebで確認します。車載機の取り付けは不要です。
Poitto 開発チーム