はじめて安全運転管理者を任されたら — 決め方・届出・そのあとの仕事
社用車が増えて「安全運転管理者を決めて」と言われた総務・事務の方へ。何台から必要か、誰を選べるか、どこへ届け出るか、選んだあとに何をするのかを、専門知識なしで読める順に並べました。数え方でつまずきやすい3点と、他の会社のやり方も。
社用車が増えて「安全運転管理者を決めて」と言われた総務・事務の方へ。何台から必要か、誰を選べるか、どこへ届け出るか、選んだあとに何をするのかを、専門知識なしで読める順に並べました。数え方でつまずきやすい3点と、他の会社のやり方も。
ある日突然「うちも安全運転管理者を決めないといけないらしいから、お願い」と言われます。総務や事務の担当者にとっては、たいていそのような始まり方をします。車の管理が本業ではありませんし、詳しい人が社内にいるわけでもありません。
心配はいりません。**最初にやることは2つだけです。**社内で1人を決めて、15日以内に警察署へ届け出る。毎日の仕事はそのあとに続きますが、決めてから整えても間に合います。
順番に見ていきます。
会社の車による事故を防ぐために、運転者の状態を確かめる人を社内に置く制度です。 個人が自分の車に乗るのとは違い、会社が業務として運転させる以上は、会社の側にも安全を確かめる責任がある、という考え方に立っています。
きっかけは2021年に千葉県で起きた事故でした。飲酒運転のトラックが下校中の児童の列に突っ込み、5人が死傷しています。これを受けて2022年から、運転前後にお酒が残っていないかを確認して、記録に残すことが加わりました。
この確認を怠ったこと自体を罰する規定はありませんが、都道府県公安委員会から安全運転管理者の解任を命じられることがあり、その命令に従わないと罰金になります。金額の話は最後にまとめます。先に、自分の会社が対象になるのかから見ていきます。
1つの事業所で、車を5台以上使っていれば対象です。
ただし車の種類によって、境目の台数が変わります。
| 車の種類 | 何台から |
|---|---|
| 乗車定員が11人以上の車(送迎バスなど) | 1台から |
| それ以外の車(乗用車・バン・トラックなど) | 5台から |
送迎用のワゴンやマイクロバスを1台でも使っていれば、それだけで対象になります。白ナンバーの乗用車やバンだけであれば、5台が境目です。
① バイクは0.5台で数えます。 大型・普通の自動二輪は、1台を0.5台として計算します。バイク4台なら2台分の計算です。
② 会社全体ではなく、事業所ごとに数えます。 本社に3台、支店に4台なら、合計7台ですが、どちらの拠点も対象になりません。数えるのは「その車をどこで使っているか」の拠点ごとです。逆に、1つの事業所に集まっていれば、会社全体の台数が少なくても対象になります。
③ 運送会社はこの制度の対象外です。 運送業として国からの許可を受けて荷物や人を運んでいる会社は、別の制度(運行管理者など)が適用されるので、こちらの対象から外れています。ただし、軽自動車やバイクで荷物を運ぶ運送事業(軽貨物の黒ナンバーやバイク便)は対象から外れません。自社がどちらに当たるのか分からないときは、それを先に確かめてください。
社内の人から1人選びます。外部に頼む形ではありません。条件は2つだけです。
2つ目でつまずく会社が多いのですが、経験のある人が社内にいない場合でも、警察庁の制度の概要は「2年以上の実務の経験を有する者等」と書いていて、末尾に「等」が付いています。条文では、公安委員会が行う教習を修了した人は1年の経験で足り、公安委員会が同等以上の能力があると認定した人も選べます。該当する人がいないときは、届出をする警察署に直接たずねるのが確実です。
なお、過去2年以内に飲酒運転や無免許運転などをした人は選べません。
台数がさらに増えると、補佐役の「副安全運転管理者」も必要になります。
| 事業所の台数 | 副安全運転管理者 |
|---|---|
| 20台以上40台未満 | 1人 |
| 40台以上 | 20台増えるごとに、さらに1人 |
5台〜19台の会社なら、当面は1人決めれば足ります。
選んだ日から15日以内に、都道府県公安委員会へ届け出ます。
窓口は、その車を使っている場所を管轄する警察署です。書類の様式は各都道府県の警察のホームページにあります。
手順は4つです。
分からないことは、警察署に電話でたずねてかまいません。 届出を受け付けているのと同じ窓口なので、対象になるかどうか、誰を選べるか、まとめて確認できます。自分で調べ込むより確実で、早く済みます。
| 誰が | 何を負うか |
|---|---|
| 会社(法律では「使用者」) | 車検と自賠責を切らさない、点検を実施する。義務を負っているのは会社そのものです |
| 安全運転管理者(社内から選ぶ1人) | 毎日の確認と記録。中身は法律で9つ決まっています |
| あなた(総務・事務の担当者) | 届出の手配、記録の様式づくり、期日の管理 |
あなた自身が安全運転管理者に選ばれる場合は、表の「安全運転管理者」と「あなた」が同じ人になりますが、役割としては別物です。
調べていると、よく似た名前の制度が出てきます。先に切り分けておきます。
運行管理者——トラック・バス・タクシーの運送事業者の制度です。緑ナンバーで人や荷物を運んで運賃をもらう会社の話なので、社用車を使うだけの会社には出てきません。
整備管理者——こちらは道路運送車両法の制度で、必要になる車が限られています。乗車定員30人以上のバスは1台から、マイクロバス(乗車定員11人以上29人以下)は2台から、車両総重量8トン以上の車は5台から。乗車定員10人以下で8トン未満の車、つまり白ナンバーの乗用車やバンだけであれば、何台あっても選任は要りません。
選任の手続きは、ここで終わりではありません。実際の仕事は、決めたあとから毎日続きます。
法律で決まっているのは9つで、性質が2つに分かれます。
A. 毎日、記録に残す仕事(5つ)
B. 必要なときに判断する仕事(4つ)
負担になるのは A のほうです。 毎日その場で確認し、書き、1年分を保管する。運転する人数が増えるほど、この事務の量が増えていきます。B は長距離の運行や悪天候といった場面が生じたときに判断する仕事になります。

記録の残し方と保管は、事務の担当者が整える業務になります。
記録の中身(何を書くか・直行直帰のときはどうするか)は アルコールチェック記録簿の書き方 にまとめています。
記録の残し方に決まった様式はないので、会社ごとにやり方が違います。選ぶのは会社で、安全運転管理者が1人で決めることではありません。実際によく使われているのは、次の3つです。
紙の記録簿に手書き 警察のホームページで様式例が配られているので、印刷して事務所に置いておく形です。人数が少なく、全員が毎朝事務所に寄るなら、これがいちばん手間がかかりません。
Excel やスプレッドシート 様式例が Excel ファイルで配られている県もあるので、そのまま使えます。集計や検索がしやすい反面、ファイルの置き場所と、誰が入力するかを決めておかないと散らかります。やり方は Excelで車両管理する方法 に書きました。
アプリやクラウドのサービス 運転者がスマートフォンから報告し、管理者が画面で確認する形です。直行直帰が多い会社や、人数が増えてきた会社で使われます。
どれを選んでも制度上は問題ありません。 記録の様式も、紙か電子かも、決まりがないからです。ただし、営業所に寄らない日に、電話やカメラなどで運転者の声の調子や顔色を確かめ、持たせたアルコール検知器の測定結果も確認する手順は、どの形でも残ります。人数と、直行直帰がどれくらいあるかで選ぶのが現実的です。
「選んだのに届け出ていない」状態が意外と多い 選任と届出は別の行為です。社内で決めて安心してしまい、15日を過ぎているケースがあります。罰則も別々に決まっています。
アルコール検知器は、置いてあるだけでは足りない 「常時有効に保持する」ことが求められていて、正常に動く状態を保つこと、定期的に故障がないか確かめることまで含まれます。
車が増減したら、対象かどうかが変わる 5台になった時点で義務が生じます。逆に減ったときも、そのままにしないでください。
台数の数え方について国が示しているのは「乗車定員11人以上は1台以上、それ以外は5台以上」「バイクは0.5台」「事業所ごとに数える」までです。使用頻度や、リース・社員の車といった個別の事情がどう扱われるかは、管轄の警察署に確認してください。届出の窓口と同じところが答えてくれます。
警視庁は、複数の営業所を1人で兼任することはできず、営業所ごとに選任する必要があるとしています。法律も、選任は「使用の本拠ごとに」と定めています。
まず届出をしてください。そのうえで、遅れた事情を窓口で伝えれば大丈夫です。放置しているほうが問題になります。
試験はありません。年齢と実務経験の条件を満たしていれば選べます。ただし選任後は、都道府県公安委員会が行う講習を受けることになります。
4種類あって、金額が違います。
| どうなったとき | 罰則 |
|---|---|
| 安全運転管理者等を選任しなかった | 50万円以下の罰金 |
| 選任したのに届け出なかった | 5万円以下の罰金 |
| 解任命令に従わなかった | 50万円以下の罰金 |
| 是正措置命令に従わなかった | 50万円以下の罰金 |
「50万円」だけが話題になりますが、届出漏れは別の違反です。選任と届出は2つの行為なので、片方だけで止まっていないか確認しておくと安心です。
根拠: 安全運転管理者制度の概要(警察庁)/安全運転管理者制度(徳島県警察)/道路交通法(e-Gov)(対象から外れる事業者=第74条の3第1項、選任・届出・命令=同条第1項・第4項・第5項・第6項・第8項、罰則=第119条の2・第120条第2項第3号)/道路交通法施行規則(e-Gov)(台数=第9条の8、選べる人の要件=第9条の9)/道路運送車両法施行規則(e-Gov)(整備管理者の選任=第31条の3)/安全運転管理者等に関するよくある質問(警視庁)(営業所の兼任・直行直帰のときの確認の方法)
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社内で1人決めて、条件を確かめて、警察署に紙を出す。ここまでは半日あれば片づきます。分からないことは窓口で聞けるので、調べ込む必要もありません。
続くのは、そのあとの毎日のほうです。9つのうち5つは、毎日その場で確認して、書いて、1年ためる仕事になります。運転する人が5人を超えたあたりから、確認そのものより、集めて記録に残す事務のほうが重くなってきます。
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Poitto 開発チーム